セダカコブヤハズカミキリ鈴鹿山脈中央部亜種の記載
セダカコブヤハズカミキリParechthistatus gibber (Bates, 1873)は後翅が退化し,飛翔能力がないため各地で特徴的な個体群に分化し,多くの亜種が記載されています。これまで鈴鹿山脈には「関東~近畿地方南部亜種」ssp. shibataiが分布するとされていましたが,鈴鹿山脈中央部の地理的に隔離された地域に,外部形態の異なる集団を見出し,「鈴鹿山脈中央部亜種」ssp. imanishiiを記載しました。ssp. shibataiに比べて赤味が強く,瘤状隆起がなだらかな特徴があり,さらにssp. shibataiや「名義タイプ亜種」ssp. gibberに比べて触角が短いという特徴があります。これらの特徴は集団内では安定しており,マヤサンコブヤハズP. (M.) furciferusとの一過性の交雑個体などではなく,長い時間をかけてssp. shibataiから隔離され分化した集団と考えています。亜種名は生物の棲み分け理論の提唱で知られる故・今西錦司博士に献名しました。今西博士は登山家としても知られ,当該新亜種の分布域もくまなく歩いていたようです。
淺野悟史(2024)鈴鹿山脈中央部産セダカコブヤハズカミキリの1新亜種,月刊むし,636: 25-29.
(Asano, S., 2024, A description of the new subspecies of Parechthistatus gibber (Bates, 1873) from central Suzuka mountain range. Mushi, 636: 25-29.)
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