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日本の河川(アマゴのいる沢).jpg

シイタケ原木林の保全に関する論文が掲載されました

対馬で行った研究成果が論文として掲載されました。

 対馬では約20年前から少しずつシカ個体数が増加し,現在では農林業に重大な被害を及ぼすようになっています。一方で農林業被害額に現れない植生への影響も深刻であり,生物多様性保全を考える上で見過ごすことはできません。しかしながら経済活動と結びつきにくい下層植生の衰退に対する対策は遅れています。その中にあってかろうじて経済活動に結びつきやすいのがシイタケ原木を得たあとの伐採跡地の保全です。

 対馬ではシイタケ原木の多くが天然のアベマキやコナラといったブナ科落葉樹の伐採と萌芽更新によって調達されてきました。これまでは伐採後,15年程度放置することで再び原木林として利用できたわけです。しかし,シカ個体数の増加により,草本が減少するとシカがブナ科落葉樹の萌芽を食べるようになり,枯死する株が現れました。これに対し,2014年,長崎県はシイタケ農家への補助金を設け,伐採跡地をネットで囲い保護するような施策を打ち出しました。ところが対馬における申請は当時ほとんどありませんでした。これまで必要のなかった作業を,しかも作業量の多い伐採直後に義務付ける補助金制度が受け入れられなかったと考えられます。これを何とかしたいと考えて現地に入りました。

 そこで研究者としてできるのは調査に基づくシカ食害の現状,そして伐採株の枯死に至るまでの萌芽や伐採株の変化を定量的に示すことです。枯死株の特徴を数値化することで「どのような株が枯れるのか」そして「伐採後,どれくらいの時間が経過すると現れるのか」をモデルによって示し,萌芽幹部への食害による萌芽の矮小化,そして伐採後2年が経過すると多くの株にこの特徴が現れることを明らかにしました。ネットを張る時期が「直後」から「萌芽幹部への被害が現れる2年以内に」とできれば,保全に参加してくださる農家さんも増えるのではないかと思います。結果として対馬の森林資源の循環的な利用が継続していくことが期待できます。

淺野悟史・西前 出,2017,ブナ科落葉樹の萌芽更新に対するシカ食害の影響評価 ―シイタケ原木林の適切な獣害対策に向けて,環境情報科学論文集 報告 31,pp.293-298,査読有

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